氷見に来て驚いたのは、ほんとうに海が目の前にあるということだった。駅を降りるとざぷざぷと波の音がかすかに聴こえてくる。高岡から列車に乗ってくる人のほとんどは途中にある雨晴海岸で降りてしまうので、氷見駅が意外なほど静かであることも波音が良く聞こえる理由かもしれない。
氷見の定宿になっているHOUSEHOLDは氷見駅よりもさらに海際に建っていて、信号をタイミングよく渡ればほんの十数秒で海へたどり着く。すぐ目の前が海という点は鎌倉と同じだが、賑やかな湘南の海と違って氷見の浜辺はひどく静かで穏やかだ。
HOUSEHOLDにはnamiとyaneの二つの客室があって、わたしはいつも小さい方のnamiへ宿泊している。部屋の大半をベッドが占めていて、あとは洗面台と窓とハンガーが少々。広々と過ごしたい人には不向きかもしれないが、わたしはこのシンプルな充実感が気に入っている。そして何より寝転びながら海を見下ろせるのがいい。
ベッドに寝転がると、ざぷざぷと波の音がした。部屋の明かりを消して外を見てみると、昼間に海があったところは一面真っ暗になっていた。どこまでが海で、どこからが空かわからない。目を閉じて波の音を聞いていると海の底にいるような気分になり、波に溶けるようにすぅっと眠った。
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目を覚ますと朝の4時半だった。海から昇る朝日を見たいと思って5時にアラームを設定していたが、身体が楽しみにしていたせいか早めに起きてしまったらしい。
簡単に身支度を整えて海岸へ出る。朝の海には意外と船が多く、あちこちに船が行き交った軌跡が残されていた。代わる代わる、時に重なって聴こえてくる海鳥の声と船の汽笛に耳を澄ませていると、じんわりと日が昇ってきた。
昇り始めた太陽は圧倒的な力で夜を割り、夜と朝の境目だった海のすべてはあっという間に朝になった。まぶしい太陽は波間に揉まれて散らばって、きらきら光る金の粒になった。

朝日を一身に浴びているおかげで身体の表面が温かい。そしてこれも朝日のパワーのおかげだろうか、身体の内側からはむくむくと力が湧いてくる。今ならずんずんと何処へでも歩いて行けそうな予感がして、わたしは腰を上げて氷見漁港に向かって歩き出した。
( 富山の話(2)富山の魚と寿司屋 へ続く)

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