鹿児島(1) 鰻温泉

指宿駅からかわいい黄色の電車に乗って、山川駅へやってきた。タクシーに乗り換えて15分ほど登った山の中に、鰻温泉という鄙びた温泉地がある。

温泉がある集落のほとりには大きな火口湖「鰻池」があり、昔々に村人に真っ二つに斬られても生き延びた大ウナギが逃げ込んだという伝説に由来している。悠々と水をたたえる湖はまるで海のように広々と大きく、なるほど大ウナギが棲んでいそうな雰囲気を秘めている。

鰻温泉は皮膚病に効果がある単純硫黄泉で、西郷隆盛も幕末から明治にかけて湯治に訪れたという。滞在中の西郷隆盛の様子が事細かに伝承されていたり温泉のお礼に残していった襦袢(シャツ)が家宝として現在まで伝わっていたりと、隆盛と地元の人々の交流はかなり深かったようだ。
隆盛自身も鰻温泉をたいそう気に入っていたらしく、本当は襦袢ではなく自分が飼っていた猟犬を家人に贈ろうと思ったほどだったらしい(家人に「怖いから」と断られて襦袢になったんだとか・・・)。

数人でいっぱいになってしまう程の広さの湯船にはぷくぷくと源泉が注がれていた。ほのかに硫黄の香りがする湯に沈み込むと、わたしの体積分の湯がざぷざぷ溢れて流れていく。そこへまた湯口から新たにぷくぷく源泉が注がれていく。ざぷざぷとぷくぷくの無限ループ。
嗚呼、これが極楽、こんな贅沢があっていいのかしら!

熱めの湯で一気に体温が上がり、湯から出ている顔はポッカポッカと火照ってきた。そのポカポカは湯を上がってからもしばらく続き、11月だというのに汗が止まらないほどだった。

鰻温泉の集落には「スメ」と呼ばれるかまどが点在している。温泉の蒸気を利用して誰でも簡単に蒸し料理を作ることができるもので、鰻温泉の番台のお母さんに注文しておくと、湯から上がるまでにゆで卵を作っておいてくれる。自分が温泉で茹でられる間に卵も茹でておいてもらおうという寸法である。

茹でたて熱々の卵はたいそう熱かった。お手玉みたいに持て余しながら冷ましていると、番台のお母さんがサービスでコーラを持たせてくれた。コーラは絶妙にぬるくもはや炭酸飲料を名乗ってはいけないほど微々々々炭酸であったが、むしろその微シュワっぷりが温泉で腑抜けになったわたしにはたまらなく心地よかった。

送信中です

×

※コメントは最大100文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!
error: Content is protected !!