岐阜県のちょうど中央あたりに、郡上八幡という街がある。四方を山に囲まれ、長良川とその支流の吉田川が流れる自然あふれる場所だ。
街には川から引き込んだ無数の水路が流れていて、さわさわ、こぽこぽと気持ちいい水の音が聞こえてくる。

かつて郡上八幡に住む人々は豊かな水を洗濯や料理、防火など生活用水として巧みに利用していた。現在は上下水道が整備されているのでそのような光景は少なくなったが、住民の方が水を大切する心は変わっていない。
夏は街のあちこちで川遊びをしたりスイカを冷やし、冬になれば鯉のぼりの糊を川で洗い落とす「寒ざらし」が行われる。郡上八幡では、一年を通じて水のそばで暮らしが営まれている。
そんな郡上八幡の風景に惚れ込んだのが、「ちびまる子ちゃん」でお馴染みの漫画家さくらももこ先生だ。さくら先生は知り合いに「郡上八幡はオオサンショウウオが住むほど水が綺麗な場所だ」と聞いてから郡上八幡への羨望がむくむくと膨れ上がり、取材や旅行を通して何度も足繁く通っていたという。

この本にもオオサンショウウオの話は出てくる。

そんな風に郡上八幡に惚れ込んださくら先生だが、惚れ込み具合が限界突破してついに自ら「GJ8マン」なるご当地キャラを生み出すに至った。
補足しておくと、読み方は「ジー・ジェイ・エイトマン」だ。グジョーハチマンではない。郡上八幡に着想を得ているからそう読みたくなる気持ちもあるのだが、正しくは(?)ジー・ジェイ・エイトマンだ。ちなみにWikipediaにも載っている。

水を模したキャラクターに全共通しそうな頭部のほか、全体的にゆるく柔らかくシュールないで立ちである。全身水色タイツというカラーリングもまさに水の力で戦うヒーローならではだが、実際ピンチの時にこれが現れたらガクッと気が抜けて敵も味方も闘う気が起きなくなるかもしれない。
ここまで読むとゆるいご当地キャラというだけなのだが、驚くことにGJ8マン、なんとアニメ化されている。しかも全50話(特別編含む)という大長編!YouTubeで公開されているので、上記のリンクからぜひ視聴してみてほしい。
オープニングの「GJ8マンのテーマ」やエンディングの「長良川鉄道の夜」はさくら先生の作詞で、なんと第一期はさくら先生自身も声優として参加している。先生の郡上八幡やGJ8マンへの愛の深さが感じられてしみじみとする。
冒頭に流れる郡上踊りの「かわさき」や「春駒」が郡上の郷愁をそそるほか、毎回ビミョーな流れで不本意ながら変身するGJ8マンの世知辛さ、そのまま飛んで帰ればいいのに何故か毎回美濃太田駅から長良川鉄道で郡上へ帰還するというローカル感が、他のヒーローアニメとは一線を画したゆるさで癖になる。
前置きが長くなったが、今回はそんなさくらももこ先生とGJ8マンのミュージアムが郡上八幡にオープンしたということでワクワクと散歩に繰り出した。

郡上には「郡上鮎」と「和良鮎」という二つのブランド鮎があり、どちらも爽やかなスイカの香りと淡白で引き締まった身が美味しい夏の風物詩だ。


踊る人々と川の流れ、お城と鮎。郡上八幡の風景がぎゅっと詰まっていて、とても好きな看板だ。
この日は土曜日で街はそれなりに賑わっていたが、ミュージアムの周りは入館チケットを買ったり写真撮影をする人たちの列ができていた。
とは言っても都会のように何百人も行列するような長蛇の列ではないところに、さくら先生の愛した郡上八幡の呑気さがあるように思う。

有料エリアは事前予約も可能なので、スムーズに入館したい人は予約がベターだ。
ご予約内容の選択|さくらももこと郡上八幡airrsv.net
ネタバレになるのであまり有料エリアのことを書いてもいけないが、さくら先生が郡上八幡のどこを好きだったか、どんな風に過ごしていたかが連綿と展示されている。またGJ8マンの原画や絵コンテも飾られていて、この施設がGJ8マンにも脚光を当てているのだとはっきりと伝わってきた。


GJ8マンと同じくらいコジコジの割合が高い。

アクリルスタンドを初めて組み立てたので何が正解かよく分からないが、GJ8マンのパーツがちゃんとハマらなかった…。まあいいか。
もっとGJ8マングッズが欲しいという人には、すぐ近くにある「郡上八幡旧庁舎記念館」をお勧めしたい。


こちらではシルクスクリーンで好きな柄の手拭いを制作できるので、オリジナル手拭いを作って郡上踊りに参加するのも楽しいかもしれない。
ミュージアムとGJ8マングッズを満喫したところで、郡上八幡さんぽはまだまだ続く。
いがわこみち

民家のすぐ裏手にあり、夏はスイカや野菜を冷やしたりおとり鮎(鮎の友釣りに使う仕掛け用の鮎)を飼っておくこともある。


観光客全員に第一声で「でかい!」と言わしめるビッグな鯉を一度ご覧あれ。
南天のある風景

冬には南天のみを丸く集めた縁起物の「南天玉」が盛んに作られ、「難を転じて黒(黒字)になる」とそれぞれの店や家の軒先に飾られる。
防火用バケツのある風景

TOMORROW 燈蠟

季節ごとのパスタも美味で、締めのパンナコッタまで大満足。
gugulab ググラボ

かなり広い店内には食器や大物の家具、昔のおもちゃまで幅広く並んでいる。

さんぷる工房


乗れたらラッキー!
糸カフェ

ランチタイムのカレーや季節ごとのスイーツが美味しい。
ドマトマドブックス

食文化や民俗、アート関係の本のほか、古本小説やZINEがバラエティ豊かに並ぶ。
野田軒製菓舖

大正時代から変わらない素朴な味わい。
宗祇庵

郡上木履

店舗では100種類以上ある鼻緒から好きなものを選ぶと、職人さんがその場で調整して「マイ下駄」を作ってくれる。
郡上八幡旧庁舎記念館


郡上踊りに向けて
最後に、今月から始まる郡上踊りについて書いておこうと思う。
郡上踊りは2026年は7月11日〜9月5日まで1ヶ月以上にわたって開催され、そのうち8月13日〜16日は徹夜踊りとして夜8時〜朝5時まで踊り明かす熱烈な盆踊りだ。
郡上踊りは「見る踊り」ではなく「参加する踊り」であり、上手い下手も地元の人も観光客も関係なく踊って踊って踊りまくる。疲れたら郡上の美味しい水を飲んで屋台で鶏ちゃんを食べ、また踊る。そうして郡上八幡の夏が暮れゆく。
今回の郡上さんぽの目的だったGJ8マンだが、なんとアニメのみならず盆踊りにもなっているという。しかもまたまたさくら先生の作詞!
この「GJ8マン音頭」は400年の歴史を誇る郡上踊りでも踊られるということで、すっかりGJ8マンは郡上八幡のひとつの風景になっている。
この夏はGJ8マンと郡上踊りを熱く満喫する夏になりそうだ。
ではまた!

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