浸かっているとシュワシュワと身体に泡がまとわりつく温泉がある、という魅惑的な話を聞いたのは2024年のことだった。調べるうちに、それは温泉水の中に炭酸(二酸化炭素)が溶け出した「二酸化炭素泉」という種類の温泉で、九州の長湯温泉が特に有名らしいということを知った。
シュワシュワ炭酸温泉に心躍らせながら、わたしは鹿児島を出発して長湯温泉を目指した。
指宿から九州新幹線に乗り、途中の熊本で「あか牛丼」に舌鼓を打ち、特急とローカル線とバスを乗り継ぐというなかなかの長旅だった。バスの乗客はわたしと途中の三船温泉で降りて行った親子の二組だけだった。
宿泊する「クアパーク長湯」の目の前がバス停だったが、バスで訪れる人間は珍しいのか施設のスタッフさんがわざわざ玄関先まで出迎えてくれた。過去に宿泊したどの旅館やホテルでもそんなことはなかったので、なんだか嬉しい気持ち。
温泉に浸かる健康法を「湯治」というが、クアパーク長湯は政府公認の「温泉療養施設」だ。一般的な内湯はもちろん、ジャグジーや往復100メートルの歩く温泉、寝たままでゆっくり浸かる「寝湯」などジムのプールのように多様な温泉療養を楽しめる。歩く温泉や寝湯は露天エリアにあるのだが、入浴着の着用が義務付けられているので他人の視線を気にしなくてもいいのも嬉しい。




平日だったからか、歩行湯も露天風呂も貸切同然だった。特に露天風呂は利用客が少ないせいか、湯面に湯の花が薄い膜のように固まっていた。これが温泉マニア垂涎と噂に聞くパリパリか!と興奮しながら、パリパリした膜を掬って身体に馴染ませてみた。飽きるまで掬ってもまだパリパリは延々と続いている。なんという贅沢。気づけば1時間近くゆっくりと浸かっていた。

食事も驚くほど豪華で、地元食材や薬膳メニューを中心に色とりどりの先付から刺身、ステーキ、焼き魚、何やらお洒落なアラカルト、デザートまで至れり尽くせりだった。朝食も、地元メーカーの納豆や小鉢が籠一杯に盛られていて大満足。
貸切同然だった当時はあまり世間にこの施設の良さが知られていなかったのか、1泊2食付で17,000円という破格のお値段だったのだが、先日検索してみると24,000円にアップしていた。とはいえこの温泉と食事の内容なら24,000円でもまだまだ格安の部類に入ると思うので、ぜひ一度訪れてみてほしい。



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長湯温泉には温泉宿や立ち寄り温泉が複数ある。点在している、というレベルではなくもはや「密集している」と言った方がいい。今回は1泊2日だったものの、時間の限りいくつかの温泉に立ち寄ってみた。
ラムネ温泉
宿泊したクアパーク長湯よりも知名度は上のようで、何人かの温泉客がいた。
メインはぬるめの炭酸露天風呂で、ここが一番シュワシュワの炭酸泉を実感できた温泉だった。32℃くらいのぬる湯の中でじっとしていると炭酸ガスがベールのように身体中につき始め、拭っても拭っても身体が気泡だらけになる感覚が面白い!32℃の湯は入ってすぐは冷たさもあったものの、炭酸の血行促進効果によりじわじわと不思議な温かさを感じてくるお湯だった。


大丸旅館 テイの湯/みどりの湯
旅館だが500円(当時価格)で日帰り入浴も可。
湯船は結構熱めな46℃。温度により炭酸ガスは抜けてしまっているものの、それでも体の芯にじんと染み渡るような素晴らしい温泉だった。

しづ香温泉
長湯温泉で入った中ではぶっちぎりの渋さ漂う温泉。なんと入湯料200円という格安さ。
昭和時代に一気にタイムスリップしたような独特な鄙びた雰囲気と、湯船の周り一面の湧出物模様がアートのようで大変よい。現代的で綺麗なお風呂じゃないとイヤ!と言う人には厳しそう。


にゃがゆん温泉
猫モチーフの人形工房に併設された温泉。基本家族風呂での利用なので利用料金は1時間1,500円とお高めだが、きっかり1時間独り占めで楽しめる。
宝船に乗った猫の壁画に癒されながら入る温泉も、また良い。


身体のすべてがふやけそうなくらい温泉を満喫して、次なる目的地「別府」を目指してバスに乗った。

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